Sound Horizon(音楽グループ)の楽曲考察です。
Sound Horizon(略サンホラ)は、1つ1つの曲が物語構成となっており、歌詞、メロディー、ジャケット絵から物語を読み解く楽しみ方ができるジャンルです。正解は1つではなく、個々人の解釈でOK!とされています。
今回はArkという楽曲を私なりに読み解いてみた結果をまとめます!
※初考察で、刊行物すべてをチェックした上での考察ではありません。このキャラがいないけど?とかあるかもしれませんが、ご容赦ください。
※コミカライズは未読です。ユーチューブのMAD動画でチラ見した程度はあります。
登場人物
歌詞に登場する、存在が確定しているキャラクターだけ記載。
・ソロル(妹)
フラーテルの妹。兄に恋愛感情を持っている。変な宗教に入信してしまう。
・フラーテル(兄)
ソロルの兄。妹に恋愛感情がある。背徳感は感じている。
・監視卿
ソロルとフラーテルの泥沼恋愛を観察している何者か。婚約していたが破談になったもよう。
・仮面の男
曲の最後に忽然と姿を表す人物。この話のメインには関わってこない。添え物。
ポイントを拾ってみましょう
まず物語を作るには材料が必要です。歌詞から読み取れる要素をピックアップしてみます。
・愛し合う兄妹。兄の方は近親相関による背徳感は感じている。
・妹は「信じていた人」に裏切られたショックから、とある宗教に入信
・兄は妹に嘘をつき、何かの事実を取り繕う。
・妹は信仰に染まりきってしまい、精神異常の果てに兄を殺害
・上述の兄妹の物語は誰かの記憶であり、今は何者かがその記憶を使って人体実験を行っている。
・人体実験の観察者にも実験中の兄妹と類似した過去があるが、完全に同一の結果にはならない。
・観察者は早く楽園(理想の状態)に辿り着きたいと思っている。
切り取ってみるとこんなところでしょうか。とはいえ、筆者の解釈が含まれたポイントになっているのはご容赦ください。
歌詞から物語を作ってみたよ!
歌詞で述べられている順番で物語を作りました。
~①プロローグ~
兄妹は両親から虐待を受けて育った。過酷な環境の中で妹は兄に精神的に依存して育ち、恋心まで持ってしまう。また兄もそんな妹を愛おしく思ってしまい、隙間で肉体関係を持つようにもなる。
<考察ポイント>
「兄妹は近親相関な恋愛をしている」という歌のメインテーマに色を付けました。家庭という閉鎖環境で、両親から加害される故、本当に信頼できるのは兄妹間だけで、成長とともに信頼が性愛に変わってしまったと仮定します。
2人はもう肉体関係までいってると思います。「あんなに愛し合っていた」「在りし日に咲かせた花弁」は性行為の隠喩と捉えました。あと、妹は兄に依存体質だったのだと思います。兄=親代わりなこともあって。この要素が後々宗教にはまり込む手助けになってしまう。
~②2月の雪の日、ソロル(妹)の記憶~
妹の記憶の断片。妹はとある宗教に入信。教団ではアーク(ナイフ)を用いれば辛い現実を離れ、楽園へ行けると言われた。現状のままでは兄との恋愛関係はもう戻ってこない。その前に手を打つ必要があった。
2月の雪の日(おそらくバレンタインデー)、ナイフを持って兄の元へ赴き、涙ながらに迫る。
「ねえ、なぜ変わってしまったの?あんなに愛し合っていたのに」
~③六月の雨の日 兄(フラーテル)の記憶~
兄の記憶の断片。
兄の回想。妹は信頼していた人に裏切られたことでショックを受け、おかしな宗教に入信した。そこで教義に染まり、信仰心と自分への恋情を強めてしまった。そのことが兄を殺す凶器の役割を果たした。
兄は死ぬ間際、妹との恋愛模様を回想する。兄は近いうちに結婚することになっていた。2月にそれを知った妹が訪ねてきて、ナイフを握りしめ過去の愛を確かめに来た。
妹のことは今でも愛している。でも、近親相関は悪い事だし、新しい生活に向かっていく今、結婚を取りやめる気はない。とはいえ妹にそれらを正直に話す強靭な精神は持ち合わせていなかった。妹に「愛してる」「結婚はやめる」等との嘘をつき、抱きしめてその日は収めた。
そして6月、兄が入籍する日、妹は兄を刺殺。
<考察ポイント>
・「『進行』という狂気」は、(宗教の)信仰と(恋愛の)進行のダブルミーニングかなと。
・妹が「信じていた人」というのは、兄ではないと思いました。この部分の歌詞の主語は兄です。自分で自分のことを「信じていた人」と言うのはちょっとおかしいなと。じゃあ誰か?というと、誰でもいいのかなと思いました( 妹がとても信頼していた人なら誰でもいいです。そこは個々人でキャスティングしていいのかなと思います。親友とか先生とか、上司とか。日常生活で頼りにしていた人だったけど、裏切られて、生活に支障がでるレベルの役割の人ですね。
「信じていた人」を「兄」にするなら、こうですね。幼いころ兄妹は結婚の約束をしていたのかな。妹が一番好きだから結婚しないよ、とか。それが今回の婚約発表で「裏切られた」と感じた。妹は未成年前後のお年頃だから仕方ないにしても、幼い日の約束を破られたから絶望したというのは、恋愛が世界の中心を占めてる考え方に舵を切ることになります。個人的には、「普通の生活を頑張ってみたけど挫折しちゃった健気な妹」の方が好きなので兄以外の説を推します。
・分かりづらい時系列について。2月バレンタインデーに妹がナイフとチョコを持って兄に会いに行き、6月に結婚予定(ジューンブライド狙い)だったが、何か事件があったのではないかなと思いました。
・このパートは文字通り「記憶」、すべて過去の出来事です。前半で妹の経緯について語っていますが、それは兄が後日、妹の過去を調べた結果分かったことを述べているのだと思います。まさか妹がやばい宗教に入ってると知りながら放置してずっと生活していたとは思えません。愛し合っているんですから。
~③兄妹の愛憎劇を監視する存在~
実はさきの兄妹の物語は「誰かの記憶」だった。とある研究施設にて、全く別の人間2人を用意し、兄妹それぞれの記憶を埋め込み、仮想空間の中で行動させ、何かの結果を得る実験が行われていた。今しがた行われた実験では、妹役が兄役を殺害する結果に。症例まで付いた典型的な結果だった。
実験を監視していた人物は過去を追憶する。彼にも兄妹の物語のような経験があったが、限りなく状況を近づけても過去と同じ結果にはならなかった。ふと被検体が実験前に言っていた言葉を思い出す。
「箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬(器官)に手を加えて
驕れる無能な創造神(神)にでも成った心算(つもり)なの?」 か…
自分のしていることは人道に反している。婚約だって破棄した。それでも楽園(理想の状態)へ還りたい。そこで彼女が待っているのだから。
望む結果が得られず、彼は深いため息を吐く。モニターの向こうにいるはずのない仮面の男が立っていた。
歌詞に入りきらない設定など
物語に載せきれなかった細かいトピックです。
~実験の監視パートについて~
実験の監視者は兄である。現実では妹は亡くなり、兄は生き延びた。兄は婚約を破棄し、妹を取り戻す活動に身を投じる。
実験の内容とは、別の人間に妹の記憶を埋め込んで、故人となった妹を復活させること。記憶を改ざんするのは技術的に可能だが、妹本人の性格を再現するに至らず、現実の出来事とは別の結果(妹が兄を殺害)を重ねている。自身の行いに良心が痛むのか、被検体の抗議の声「禁断の器官に手を加えて神になったつもりか?」を気にしているもよう。
おそらく被検体となる人間は、記憶の改ざん処置を複数回にわたって受けるものと思われる。1度きりの実験で済むなら「神になったつもりか?」の文句も言うことなく自我を失うと思うので。
兄は妹に適合する人間を探し当て、愛し合える環境に還りたいのだと思います。一度は婚約して心機一転を図った彼ですが、やっぱり妹との関係に囚われ続けているようです。
(悩みポイント)
・実験の監視者は「兄」なのですが、兄本人じゃない可能性もあるかなと。兄の記憶を受け継いだ他人もアリかと思いました。だって実験してるし。兄は先に成功したので、妹役を頑張って探してる最中の解釈。つまり兄妹はとっくに過去の人物で、記憶を閉じ込めた「箱庭」の中にしか存在しない。
~なぜ妹は亡くなってしまったのか~
兄との関係が至上の幸せだと思い、それが叶わない現実世界に絶望し、教団の教えに従ったから。兄妹は法的に結婚できないので、この世界で幸せになることは諦めた。兄の結婚が受け入れられない。兄が自分以外の誰かと結婚していく世界で生きていけない。
彼女の願いを叶えられるのは、謎の宗教。その教えは、アークを使えば楽園(理想の世界)に行けるという。そのためにはこの現実世界を棄てて(死ぬ)、箱舟(人の記憶を保存するデータベースのようなもの)に乗らないといけないと謳われていた。妹はそれに従い、数か月間をかけて自分の記憶を電子機器にコピーする処置をした。そしてそれが完了した6月、兄が結婚することから目を背けるように自殺。さらに兄に致命傷を与える。兄が誰かのものになる前に、この世から切り取ってしまいたかったかもしれません。
実験中の出来事としては、妹が兄を殺害するのがよくある症例だそう。でも現実は違う結果であったため、現実の妹に適合する人物を求めて観察は続けられています。
リアルの出来事としては妹だけ死に、兄は生き延びたと考えます。妹だけヒッソリと亡くなったのか、歌詞から感じる雰囲気から、ナイフを持った問答があった上で、妹が刃を自分にのみ向けたのか、それとも2人で心中を図ったけど、兄だけ生き残ってしまったのか。いろんなパターンが考えられます。
個人的な好みですが、妹は兄を刺そうとする直前に残った理性で、「兄を殺すなんてどうかしてる」って気づいて手を止める物語を推しますね。好きな人は殺したくないはず。
~結局のところアークって何~
楽園(理想の状態)に至るためのツール総称。歌詞上ではナイフだけど。箱舟に乗るために現実世界の自分は殺さなければいけない、そのためのお手頃サイズのナイフ。なのかもしれない。
教団がやろうとしているのは、箱舟と呼ばれるテクノロジー技術があって、そこに人間の記憶や意識をインプットすれば、嫌な現実から逃れられて好き放題できますよ~ってこと。それによって何の利益があるのかは知らん。権力者が人間を支配するためかもしれない。
~残る謎~
・兄はなぜ入信してしまったか?
兄は悲しい生い立ちを捨て、新しく生きようとしていたが、やはり妹との関係に囚われてた部分があったので、妹の死因を調べるうちに教団に入り、実験に関わるようになってしまった。
・仮面の男って何よ?
この世に絶望し、楽園を求めた人間にとりつく”概念”ですかね。妹はもう仮面の男の手の中にいると。これは、Elysion全曲を経て考えないと答え出ないです。詳しくは別の機会にさせてください。
考察の感想
思った以上に、妹の出番が少ない!
意外でした。ジャケットに描かれているおかっぱ頭の少女、アナタが主役のはずなのよ。あらまりさんの美しい歌声とともにつづられる、激しい想い。歌詞自体を見ると、妹3分の1、兄と監視卿が3分の2って感触です。じゃあなぜ兄には仮面の男がつかないのか?兄はまだ理性があって、楽園に囚われてはいないということなのか。まだ謎は残る。
結局、コミカライズと同じような展開になってしまってる気がします。読んでないけどユーチューブのMAD動画で見た限り筋が同じに見える。なぜ兄を刺したと見せかけ、妹が亡くなった絵があるのか分からなかったのですが今回ようやく繋がりました。
考察してみると、改めて深く歌の世界が見えてくるものですね。初見聴いたときは、「よくある兄弟愛でヤンデレなアレだよね~はいはい」でまとめてしまってたのですが、もったいなかった。きっと兄妹は、辛い過去を背負いながら、懸命に生きようとしていたのだと思います。兄は社会に出て働き、妹は養子にもらわれたりして。当初は妹も、兄に頼らずに頑張って生きていこうとした。けど、社会の厳しさに耐え切れず、昔の自分に戻ってしまった。そんな健気な2人の図が私は好きなのでこんな感じでまとめました。
今回の考察は歌詞から読み取った物語のご紹介でした。じゃあアークって結局何を表現したかったんだろう?とかの考察は、また別のページにします。
長々とお読みいただきありがとうございました。


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